日韓請求権交渉とアメリカ: 会談『空白期』を中心にして (이동준, HK연구교수)
2012.02.28 Views 4917
제목: 「日韓請求権交渉とアメリカ: 会談『空白期』を中心にして」(한일 청구권교섭과 미국: 회담 공백기를 중심으로)
저자: 이동준, HK연구교수
출판정보: 李鍾元・木宮正史・浅野豊美編 『歴史としての日韓国交正常化 : 冷戦編』(東京: 法政大学出版局, 2012年2月), pp. 53-82.
요지:
本稿は、公式会談の空白期における日韓間の請求権問題をめぐる攻防のプロセスを主にアメリカ解釈への対応という文脈から実証的に跡付けている。
請求権問題が日本の朝鮮植民地支配に対する日韓間の埋めがたい認識の差に淵源することは間違いない。しかし他方で、アメリカが対日講和条約第四条に関する見解を表明し「過去の清算」問題を文字通りの「請求権」問題に限定して以来、少なくとも日韓両国の当局者にとって請求権問題は、如何にこのアメリカ解釈を自国に有利に再解釈し国益を増大させるかという極めて現実的な課題であった。やや単純に言えば、請求権問題の構図は、駐日米大使館のパーソンズ(Graham Parsons)主席参事官が指摘したように、韓国ができるだけ多いお金を引き出そうとしたのに対して、日本はそれに応じる意思がないという、単純なものでもあった。
しかし、この問題が民事上の金銭問題のような形で解決できなかった原因の一つは、問題解決の「公正な」基準となるはずであったアメリカ解釈そのものが、その曖昧さに加えて、本質的には両請求権の相互放棄または韓国の対日請求権の大幅な減殺を強く求めていたことにある。そこには、日本の戦後処理負担を軽減させ日本をアジアにおける「反共の砦」として位置づけようとしたアメリカ自身の戦略的利益と冷戦の論理が見え隠れしていた。こうしたアメリカの「日本重視政策」の下で、日本側は、講和条約第四条(b)項そのものに抵触しかねないと認識しつつも、在韓日本人財産に対する請求権を主張し、韓国の対日請求権との相殺を図った。それに対して韓国側は「アメリカ解釈Ⅰ」が日本の対韓請求権を否認した事実のみを取り上げて日本の主張を封じようとした。これが初期日韓会談決裂の経緯である。
こうして訪れた「空白期」は、ある意味では、アメリカ解釈を再解釈する期間であった。この時期は、大きく見て、日本側が対韓請求権に拘泥し続ける前半期と、対韓請求権の主張を正式に放棄する後半期に分けられるが、その過程では韓国と日本のアメリカ解釈に対する認識の変化があった。
日韓両請求権の「相互放棄」と政治的妥結を求めたアメリカの仲裁活動が挫折し日韓関係の展望が閉ざされると、日本政府はそれまでの方針から一転し、対韓請求権を放棄する方向に政策の舵を切り始めた。ただし、その「放棄」の実質は、岸首相が金裕澤大使に明言したように、「あっさり放棄する」ことではなく、あくまでも韓国の対日請求権の減殺を前提とする、条件付の放棄であった。この際、日本側が頼りにしたのが、「アメリカ解釈Ⅱ」のレラヴァント条項であった。日本側はこのレラヴァント条項に依拠する限り、対韓請求権の放棄を表明しても韓国の対日請求権を阻止しうると判断した。日本側が「アメリカ解釈Ⅱ」の受容を韓国側に求め続けた所以である。
これに対して、韓国側は対日請求権を保全することに懸命であった。韓国側にとってアメリカ解釈は、それまで日本の対韓請求権主張を封鎖する手段として有効であったが、日本が対韓請求権主張を放棄してからは、むしろブーメランとなって韓国の対日請求権を傷付ける要因となったからである。そこで韓国側は「アメリカ解釈Ⅱ」と対日請求権とを分離することを強く求めた。
結局、両側の攻防戦は五八年一二月、日本側が韓国の対日請求権を「誠意をもって」解決することに言及し、韓国側が「アメリカ解釈Ⅱ」に「同意見である」と表明することで、一応収束した。しかし、この至難な交渉過程が逆説的に示すように、アメリカ解釈が請求権問題解決の王道にはなり得ないことも明らかであった。日韓両国ともにアメリカ解釈を受容することで会談再開への道筋を見出したが、それに寄せた思いは完全にすれ違ったからである。「空白期」に解消できなかったこの溝はその後の正式会談でも埋められず、結局、政治的妥協に帰結し、日韓両国の「負の遺産」として封印された。